15「外食」

 スケジュール帳を見ると週末のやることリストには「独り言」「マスタデータの追加入力」だけ。予備日として時間を開けられるようにしていたら、思いのほか順調にこなすことができ上書きしなくて済んだようだ。

 気が軽くなった僕を見透かしたように、妻から「お取引先で食事をしないか」との提案あり。横で母が激しく頷いている。その向こうでは父がニコニコ。多分この人たち下打ち合わせしていたな。次週のやることを前倒ししようと思っていたんだけどと呟くも3対1では到底抗いようもなく「どのお店にしようか」と返事をした。

 家族全員を巻き込んでの事業で、「このお店は沢山注文して頂けるね」「シブい野菜をご注文されたけど、どんな料理になるのかしら」などと仕事の話しが家族の会話になっている有政家。お店に行くにも家族全員、特に両親はそれが楽しみで仕方がないようだ。

 妻も最近は積極的に食べに行こうと言っている。元々は外食嫌いのもったいない星人。外食で使った金額を自宅の食材費に換算すると何日分などとブツブツ言っていたはずなのに、僕が農吉兼務になって不在がちになってから意識が変わったのか、お取引先に食べに行く企画もそうだし、お招きして交流会をするのも彼女からの発案。「使うところには使わないとダメよ」などと指導されたりもする。

 そして最近の彼女の口癖は「農業をやりたい」。元々田舎の長男である僕と結婚する時に「実家で農業を手伝う」ことは覚悟していたようだ。しかし実際に手伝ったのは僕が実家に戻るまでの3年間。事業を始め農業体験プログラムや事務仕事を手伝うようになり、家計を支えるために補助教員をしたり、今ではまごやさいのほぼ全ての業務に関わるようになり、農作業からどんどん離れていっている。一方、両親は圃場を広げ以前にも増して農業を頑張っている。この野菜があればお客さんが喜んでくれるのにというイメージも多々あるようで、そんなこんながないまぜになっての発言と思われる。

 今日は3時半に出発して2軒に行く予定。「どっちが飲むかじゃんけんしよう」という提案を「僕が運転させてもらいます」と丁重に断った。書き忘れていた今週末のやることに気付くも後の祭り。家に帰ってからやるしかないか。何だ結構忙しいじゃん。まずは出発まで出来るところまでやろう。

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