Vol.471「スタート」

風邪か人生初の花粉症か、どうも体調がすぐれない日が続いた。自分の仕事のパフォーマンスが落ちるだけでなく、気分の悪さは周囲に伝播してチームにも悪影響を及ぼす。こうなってみて改めて体調管理の大事さを思う。そして気合で乗り切るのが少し難しくなってきている自分も認識した。

そんな中ではあったが、俊助が会社の寮に入る前に一瞬帰ってきた。目的は社会人スタートに必要な物を揃えること。色々準備にお金がかかるので貯めておけよと何度も話したはずだが、貯めていたお金は卒業旅行2回で吐き出した模様。初給与の入る迄の50日分の生活費はどうなのかと聞いたら、にやっと笑って無言で返答。こいつ、どうも祝いをあてにしているようだ。

久しぶりの孫の帰省にじいちゃん・ばあちゃんは大喜び。何かつにけてきっちりしている佳穂とは対照的に、しばしばポカをする妙に愛嬌のある俊助は格段に可愛いらしい。目論見通り生活費の一部を確保できたようだ。

父・母には天下の宝刀「出世払い」で交渉をしてきた。拒否するわけにもいかず、親子3人で久しぶりに買い出しに出かけた。一応、購入品リストを作成していたようだが実際に店に行くと必要な物が次々出てきて、結局、結構な量の買い物となった。

店を回りながら自分の時を少し思い出した。何が必要なのか全く分からず、お金もなく、ほぼ準備なく社会人がスタートした。時はバブル終末期、毎日飲み会でタクシー帰りも多く、当初3か月は本当にきつかった。

ある程度ものが揃った頃に研修期間が終わり、今度は目標に苦しむことになる。次々と初受注をあげる同期をしり目に鳴かず飛ばず。ドベ2でようやく受注した時には既に3か月が経っていた。受注額12万円、寮の近くの利用していた美容院からのものだった。同期が100万円、200万円と大きな受注を複数獲得し目標達成している中でのミジンコのような受注。

夜8時前、帰社すると所属する課のメンバー、庶務さん、そして役員までもが会社に残って待ってくれていた。僕の顔を見るなり「おめでとう!」の声と握手の嵐。正直、帰社するまでは初受注の嬉しさよりは悔しさと疲労感が大幅に上回っていたが、この光景は本当に有難くモードチェンジできた。そして、そのまま飲み会。結局、この月に他の受注も次々と獲得できて社内表彰を受けることになった。

さて、俊助。いよいよこれからスタート。やるしかないね。1年後の姿を楽しみにしています。ちょっとは出世返済できるかな(笑)

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