Vol.504「モミ殻」

朝晩の気温が下がり一気に紅葉が広がってきた。ここ最近はくすんだ感じの紅葉をめでる気になれず、この時期の山はなるべく見ないようにしていたけど、今年はちょっと違う。これまでより色合いがはっきりして少し艶やな感じがする。
特に色鮮やかなのはモミジ。特に庄原に行く途中にある山寺のモミジが素晴らしい。朝靄の向こうから現れる朝日に照らされたキラキラ輝く朱色の葉、そしてその後ろに控える古びた門と本堂。一幅の日本画を見るような瞬間、いくつかの条件が重なり現れる風景は気持ちを温かくしてくれる。

今日は農業の日と決めて、畑に入れるモミ殻を取りに行こうと前々から妻と話していた。このモミ殻はとても重宝する農業資材で我々は田んぼを畑に転用する時に使用することが多い。3年前に畑にした「は」(3枚の連なる転用した畑に上から“い・ろ・は”と名前を付けている)はまだ土が重く(田んぼ時代の土壌特性がまだ残っており粘性が強い状態)モミ殻を再投入することにした。合わせて、土壌の中和のため燻炭(モミ殻の蒸し焼き)も作ろうということになり結構内輪で盛り上がったりしていた。快晴の下、意気揚々ライスセンターに取りに行くと、、、無い。2階の保管室に入ろうとすると鍵がかかっている。
~ライスセンターについてちょっと説明。各地域に設けられている米の集積場所でJAが運営していることが多い。稲刈り後の米はここに直接持ち込まれ、乾燥・モミ摺り・選別・袋詰めの工程を担う。乾燥させた米はモミ殻を外され玄米となり(籾摺り)、外されたモミ殻は前述の保管室に運ばれる。広さはテニスコートほどで高さは10mぐらい、壁は全面金属(アルミ?ステンレス?)の結構大きな倉庫といった様相。床には数か所アリ地獄のような穴が開いている。この穴は1階につながっており、この穴からモミ殻を取り出す仕組み。保管室が2階にあるのは自然落下でモミ殻を排出するためで全面壁が金属なのは滑りをよくするため。取り出し口は個人用と事業者用に分かれている~
例年12月まではあったのに今年は廃棄処理がかなり早かった模様。期待していた母はガックリ。実はこのモミ殻、保温剤としても優れており、まごやさいでは段ボール箱に敷き詰めてサツマイモの保管などにも活用しており今回はそれ用も取ろうと考えていたので会社的にも困ってしまった。

僕が広島に帰った10年前は我が家にも米の乾燥設備一式があり、そこでモミ摺りもしていたのでモミ殻は自前調達できた。しかし、投入労力や設備の維持コストなどを考えると自前で持つ意味があまりないと判断し手放すことにした。果たしてその判断は正しかったのか。。。その翌年から近くの農家さんにお米の乾燥調製(乾燥・モミ摺り・袋詰め)をお願いすることになるわけだが、実はこの確保が大変だった。どの家にも乾燥設備はあるのだが、米のできる時期が集中してお願いしようにも設備が空いていないことが多かったのが一つ。それと、田んぼを営農団体に委託してしまい乾燥調製も含め米作りを辞める農家が続出したことも要因の一つ。刈り取った米はすぐに乾燥に入らないと痛んでしまう。(地元では“くみる”という)。特に雨が多く米自体に湿気が多い時は傷むスピードが速く、稲刈りしながら農家さんに電話しまくったことが思い出される。どうしようもなくなってライスセンターに相談に行ったら違う農家の米と一緒に乾燥させることが分かり、搬入口に米を投入する寸前で取りやめたことも(お客様にうちの田んぼで採れた米とご案内しているのでどうしても出来なかった)。もうダメかと諦めかけた時に奇跡のように電話が来て請けてくれる人が現れたり。

これまで乾燥調製を請けてくれた近隣の農家さんはこれまで6軒、うち、お亡くなりになられた方1名、米作りをされなくなった方3名、これが現実だ。先日RCCラジオの番組に出演した時に聞かれた質問がある「中山間の農業を活性化するためにどうすればよいですか?」。アナウンサーは、まごやさいがそれを担うという答えを期待したのだろうけど僕は答えに窮した。大きな川の流れの中にポツンと一人立ち足を踏ん張っている姿を想像してしまった。大きな存在になっていきたいのはやまやまだけど、飯を食うのに必死な状況であることも事実。“貧すれば鈍する”なんて言葉も浮かんできた。

モミが無くて残念!って軽めの話を書くつもりだったけど、いつも間にやら違う方向になった。今回はこの辺りで。

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