23「大雨」

 長い一日だった。



 昨日は雨の中で庄原に出勤。前日から降り続く雨の影響で、出荷自体が少なく仕事は早めに終わった。まだ明るい18時前に農吉を出て、まごやさいのある向原に向かった。電話すると雨の影響を考えて15時半にはスタッフを帰したとのこと。妻が母と検品作業を続けているという声を携帯越しに聞きながら、漠然と庄原よりも向原の方が雨が強いのかもと考えていた。



 増水した川を横目に向原へ急いだ。山間コースは土砂崩れの懸念を感じ、平地コースを選択。途中までは順調だったが、三次市の船戸という交差点に差し掛かり、信号の向こうに見えた江の川の流れに恐怖を感じた。泥水の塊が大蛇のようにくねりながら大きく曲がった護岸に轟音でぶち当たっている。絶対に敵わない圧倒的力の差に吸い込まれそうな恐怖を感じた。



 もう少し進み、三次市と甲立町の境辺り、今度は道路が冠水し始めていた。その横は泥水で稲が見えなくなった田んぼ。そして、そこに佇む農家さんという構図。気の毒にと思いつつ先に進むと今度は水けむりを上げるような強い雨。周囲は徐々に暗くなり、道路の冠水箇所は続いた。



 会社に辿り着くと、忙しそうに動き回っている妻と母の姿があった。雨の感じから更に増水する気がして、仕事途中で切り上げることにした。帰り道は恐らく冠水していないだろうと予測した山側の道を通ってみたが、ここでも1ヶ所冠水していた。



 家の約1km手前あたり、川の土手が崩れ、越えた泥水が田んぼにどんどん入っていた。畦は茶色の滝のようになり、その下の田んぼに泥水を供給していた。少し遡れば我々の田んぼがある。祈るような気持ちで車を先に進めると、奇跡的に無事だった。横の畑は泥のプールのようになっていたのでほんと紙一重。田んぼの向こうに見える川は土手の上まであと50㎝もない。これ以上増水しないことを願いつつ、家に入った。



 ニュースをつけると災害報道のオンパレード、「最大級の警戒をして下さい」と何度も繰り返すアナウンサーや気象予報士に、「最大限の警戒って具体的にどうすればいいのか?」と不毛な突っ込みを入れつつ、川が決壊しないことを願った。この川、僕が4歳の頃決壊し、その後数年田んぼか使えなくなったと何度も聞いている。義弟にとってはこの田んぼが生命線。頼む、もってくれ。



 簡単な食事をとって一旦仮眠。AM2:00に再出勤。途中の冠水箇所は水が引いており、雨脚も弱くなったようだ。5:30の納品出発に向けて急いで仕分け作業に入る。4:30、眠気で作業がはかどらない中、電話が鳴った。嫌な予感。出ると農吉のスタッフからだった。「トラックが水にはまって動かなくなりました」



 まだ、こちらの出荷作業が終わっておらず、すぐには行けない。行ったとしてもトラックが直せるわけでもない。どうすべきか、、、。作業しながら出した結論は、一度庄原に行って代替のトラックを持って来て、積み替えて納品に向かうこと。6:00前に出荷作業を終え、妻の発案でまごやさいは車2台で納品に向かうことにした。



 送り出した後、僕はトラックが止まった現場に行って状況確認。納品先への遅配連絡、故障車の移動と修理先確保、市内の通行可能ルートの情報収集、関係者への共有など、手分けして進めていった。何とか10:00前に代替トラックを故障車の前まで運び、ひざ下まで水がある道路上で荷を移した。



 納品に出発したまごやさいのスタッフと、たまたま市内にいた農吉のスタッフに交通状況を確認。県道37号は広島市内に行く途中で完全に通行止め。その手前で峠越えで国道54号に向かった妻から(ちょっと危険はあるが)通行可能で、何とか市内まで入れそうだとの報告を受け、納品ルートは54号に決まった。



 トラックを送り出した後は故障車の移動&修理の手配。実はこれに一番苦労した。JAFは当面対応できないと相手にされず、保険会社は「お金は払うが手配はそちらで」と広告の文言とは違う対応をされ方針変更。知り合いの整備工場などにあたり直し、ようやく対応してくれるところが見つかり、現地に行くも車が大きすぎて運べず断念。もう一回当たり直してようやく車を移動してもらった。時計を見たら15:00過ぎだった。



 いつもより4時間遅れでまご野菜の保冷車は帰ってきた。農吉は5時間遅れ。それでも、全て納品し終えた。いつもは発注者不在の時間に納品することが多いが、今日は遅れたことでほとんどの納品先に発注者がおり、ほとんどの方から労いと感謝の言葉を頂いたとのこと。納品をあきらめたところが多かったようだった。怪我の功名?、結果的に最大限努力したことは意味があったようだ。



 スタッフ皆さん、お疲れさまでした!



 そういえば、今日は七夕だったな。それも後4分でおしまい。

  • Facebookでシェア
  • ツイッターでシェア
  • LINEで送る